矯正治療を始める際に、多くの人が心配するのが「痛み」です。特に歯に力を加えて動かすプロセスで、痛みを感じることがよくあります。しかし、痛みは治療の一環であり、適切な対処法を知っていれば、それほど恐れることはありません。この記事では、矯正治療中に感じる歯の痛みの原因とその対処法、そして和らげるために選ぶべき食事について解説します。
矯正治療には、ワイヤー矯正とマウスピース矯正(インビザライン)などがありますが、どちらの方法でも少なからず痛みを伴うことがあります。特にワイヤー矯正では、ブラケットと呼ばれる装置が歯の表面に取り付けられ、それにワイヤーが通されて歯を動かします。ブラケットが口内の粘膜や唇に擦れることで、痛みや口内炎を引き起こすことがあり、これが特に治療の初期に多く見られる症状です。対処法としては、医療用ワックスをブラケットに塗ることで、粘膜や唇を保護することができます。ワックスは食事中に取れることもありますが、再び塗り直すことで痛みを軽減できるため、常に手元に持っておくと良いでしょう。
一方で、マウスピース矯正はワイヤーやブラケットを使わず、透明なマウスピースを段階的に交換しながら歯を動かしていく方法です。この方法では、装置が口内の粘膜に直接当たることが少ないため、ワイヤー矯正に比べて口内の痛みは軽減される傾向があります。ただし、新しいマウスピースを装着した直後は、フィット感に違和感を覚えたり、歯に圧迫感を感じたりすることがあります。この痛みは、数日以内に治まることが多く、慣れてくるとほとんど気にならなくなるでしょう。
歯が動くことで感じる痛みは、特に治療の初期段階で顕著です。装置を装着してから最初の1日から2日間は、歯にかかる圧力により、強い痛みを感じることがあります。これは、歯が動くことによって生じる正常な反応です。歯の根元に力が加わることで、歯が動く準備を始めるのです。治療の進行とともに、この痛みは次第に和らいでいきます。痛みが続く場合は、歯科医に相談してワイヤーの調整を行うこともできます。無理に強い力を加えることで歯が早く動くわけではないため、痛みが激しい場合は力を弱めることが治療をスムーズに進めるための方法です。
食事も、矯正治療中の痛みに大きな影響を与える要素の一つです。ワイヤー矯正をしている場合、特に硬い食べ物を噛む際に痛みを感じることがあります。矯正治療前は何気なく噛んでいたものでも、矯正中は思った以上に硬く感じることがあるため、食事内容を見直すことが必要です。柔らかく煮込んだスープや、小さくカットした食材を使った料理は、噛む力を軽減し、痛みを感じにくくしてくれます。特に治療初期やワイヤー調整後は、食事に工夫を加えることで、和らげることができます。
マウスピース矯正の場合、食事中はマウスピースを外して食べるため、痛みを感じることは少ないですが、食事後には必ず歯磨きを行い、清潔な口腔内環境を保つことが重要です。食べ物のカスが残った状態でマウスピースを装着すると、虫歯や歯周病のリスクが高まるため、念入りなケアが必要です。矯正治療中は、日常的なケアが痛みを軽減し、治療をスムーズに進めるための基本となります。
矯正治療中の痛みは避けられないものですが、適切な対処法を知っていれば、日常生活に大きな支障をきたすことはありません。痛みを感じたときは、無理をせずに休息を取り、続く場合は歯科医に相談することが大切です。自分に合った食事を選び、口腔内を清潔に保つことで、矯正治療をより快適に進めていくことができるでしょう。